印刷を頼む際に、印刷会社と印刷通販会社が考えられるのですが、どのような違いがあるかご存知でしょうか。
知ると知らないでは大きく違ってきますので、どこがどう違うのかを紹介していきます。

紙ではなく、電子で読む時代?出版業界における変化

かつては本というと紙で作られているものばかりでした。
皆さんもすべて紙で作られている漫画や小説をずっと読んできたことでしょう。
しかしながら、ここ最近その情勢が変わりつつあります。
というのも、電子書籍という新たな出版形態が現れました。
電子書籍は紙を使わずにタブレットやスマホの画面上で本を読むことができるのが特徴です。
これによって私たちの本との関わりは徐々に変化しつつあります。
紙の本はかさばるため何冊も持ち歩くことはできません。
それゆえ外出先や旅行先で読める本は限られていたのです。
しかしながら、電子書籍ならタブレットやスマートフォン1台あればいつでもどこでも読むことができます。
これによって私たちは常に多くの本を読めるようになりました。
なにより、電子書籍は出版の際にコストがかからないのが特徴です。
これまでは紙の本を作るための材料費が膨大にかかり、それが値段に反映されていました。
しかし、電子書籍なら材料費がかからないのでその分値段を安くすることもできます。

年々事業を拡大している印刷通販会社

こうした変化を受けて、企業の間では紙の本を出版する方法を見直す動きが出ています。
これまでは何か出版物を出す際は印刷会社に依頼するしか選択肢がありませんでした。
しかし文書を電子化して出版できるようになったからには、コスト意識も変わってきます。
あえて文書を電子化するのではなく、紙にして出版するからにはもっとコストのかからない方法はないか、と模索し始める企業が増えてきました。
これによって、印刷通販会社というものが台頭し始めてきたのです。
印刷通販会社は現在1,000億円前後の市場規模を持っているとされており、今後も成長が期待されています。

印刷会社・印刷通販会社を利用する際の流れ

では、印刷会社と印刷通販会社にはどのような違いがあるのでしょうか?
まずは印刷会社・印刷通販会社を利用する際の流れから見ていきましょう。

印刷会社の場合

印刷会社に依頼する場合、まず電話でアポイントメントを取ったうえで会社に赴いて、依頼内容を伝えることがほとんどです。
営業担当の社員が打ち合わせを行ったあと見積書を作成し、印刷の見本を作るまでには数日ほどかかることもありますので、期日に間に合うように依頼したい場合は、スケジュールに余裕を持って依頼するのがベストです。
また、印刷会社では、デザイン会社がデザインを入稿することが多いです。
つまり、ユーザー側で入稿データを作成する手間がありません。
自費出版の場合も同様で、トリムマークなどの入稿用データは印刷会社が制作する場合が多く、印刷費のほかに入稿データ制作費がかかる場合があります。

印刷通販会社の場合

RGB Printing Palette Mixing Colour Concept

一方で印刷通販会社に依頼する場合は、WEBで印刷通販会社を検索し、自ら制作した印刷用入稿データを印刷通販会社のホームページ上で入稿します。
もちろん価格や印刷数量、加工も各印刷会社のホームページ上から選択し、納品先を指定します。
印刷してもらう文書についてもデータファイルを送るだけですので、わざわざ依頼先の会社まで出向くことはありません。
価格についても、あらかじめWeb上に表示されているので、見積もりを取る必要もありません。
依頼者はサイトなどに記載されている費用を目安に依頼費を出すだけで良いのです。
依頼したあとは文書を印刷し、出来上がったものを依頼者のもとに郵送して仕事は完了となります。
出来上がった本についても依頼者が受け取りのために会社に赴く必要はありません。
このように印刷するまでにかかる時間、および印刷を終えてから出版するまでに時間を短縮できるのが印刷通販会社の特徴です。

印刷通販会社を利用するコストは安く済む?

そのほかに印刷通販会社の特徴として挙げられるのが安価なコストです。
先ほど印刷会社では営業担当が依頼を受け付けるという話をしました。
当然ながらその分の人件費は印刷を依頼する側が負担しなければいけません。
しかし、印刷通販会社では営業担当が打ち合わせを行うことはありませんので、まず人件費をカットすることができます。
人件費を大幅にカットすることを実現できたおかげで、部数が少ない場合でもコストを抑えられるようになっています。
また、大手の印刷通販会社は、たいてい自社工場を持っていますが、IT系の印刷通販会社は自社工場を持っておらず、代理店制度にに加盟している印刷工場にて印刷することがほとんどです。
自社工場ではできない印刷の場合は、他社の工場に外注することでまかなっていることもあるため、納期や費用が変動することもあります。
そもそも印刷通販会社の大半は、なるべく依頼主の近い場所にある工場から出荷しているケースが多いため、それだけでもコストカットの実現はできているのですが、「翌日までに発送してほしい」といった急な依頼では、印刷通販会社のメリットを十分に活かせているとは言えません。
このような際には、あらかじめ余裕を持った納期を設定して依頼すれば、さらにコストも大幅にカットすることも可能です。
たとえば、翌日までに完成したものを発送してもらうのではなく、1週間後や2週間後に発送してもらった方が、費用が安くなるというわけです。
よほど切羽詰っている場合でない限りは、余裕を持ったスケジュールで依頼すれば、かなりお得に利用できるでしょう。
但し、毎回同じ印刷工場で印刷している、同じ印刷機で印刷しているとは限らないため、前回と同じ仕様や入稿データであっても、色味や仕上がりが同様とならないケースがある可能性があること、品質に違いがあることは理解しておく必要があります。
印刷通販会社が安い理由の1つに、印刷工程の効率化があります。
たとえば、従来の印刷会社がある出版社から1万部の本を作ってほしい、と依頼されたとします。
そして、さらに他からも1万部の本を作ってほしい、という依頼が来ていたとしましょう。
その際はまとめて印刷することはできず、1万部ずつ印刷するしかなかったのです。
一方で印刷通販会社は二つ依頼された文書があるとしたら、同じ紙ならまとめて印刷することができます。(面付けと言います)
同じ紙質の印刷物をまとめて印刷することによって、時間とコストをカットできるのです。

自分でデザインして、印刷だけを任せることもできる

印刷会社や印刷通販会社では、出版物のデザインまで引き受けてくれることもあります。
とはいえ、デザイナーのセンスと依頼者の感性が一致するとは限りません。
綿密に打ち合わせを重ねたにもかかわらず、思っていたものとは違った出版物ができてしまったということはしばしば起こるでしょう。
こうしたことを防ぐために自分でデザインや製本を行おうとしている方にとって、印刷通販会社はうってつけと言えます。
印刷通販会社であれば、自身でデザインしたものをそのまま入稿して、印刷だけを任せることもできます。
また、印刷通販会社の多くは、多くのテンプレートをWeb上に用意してあるので、そこに手を加えるだけで入稿データが完成。簡単に入稿ができてしまうのもメリットです。
デザインが得意な方は、あえてデータだけを自分で作成し、印刷そのものは印刷通販会社に依頼するようにした方が、大幅にコストを抑えることができるでしょう。

質重視なら印刷会社へ依頼を

上記のように、印刷通販会社のメリットを数多くご紹介してまいりましたが、もちろん印刷会社にも依頼する価値は大いにあります。
たとえば、依頼するメリットとしては印刷会社ならではの高品質さにあるでしょう。
時間もコストも節約できる会社なら、誰もが利用したくなるものです。
実質、ほとんどのユーザーは、費用面で依頼する会社を決めているのではないでしょうか。
しかし、このような理由だけでは、本当に良いものを提供してもらえるとは言えません。
たとえば、高品質を求めているユーザーが印刷通販会社に依頼しても、あまり意味がありません。
大量の依頼をまとめて依頼するなら、確かに時間や費用を抑えることに繋がり、メリットも多いのですが、印刷通販会社はあくまでコストに特化した会社であり、仕上がりもそれ相応のものになります。
「もっと鮮やかなカラーや複雑な色合いを求めたかった」という強いニーズにはあまり応えられないため、品質の良い印刷物が欲しいというときは印刷会社に依頼する方が無難でしょう。
特に色合いについては、前述の通り他の印刷物と併せて印刷するため、全体で色調整を行うため、同じ通販印刷会社に同じデータで入稿しても、違う色合いで印刷されることも多々あります。
印刷会社では、自宅やオフィスで使うようなプリンターではなく、普段なかなか使用しないような複雑なカラーインクを豊富に搭載した特殊なカラープリンターを使用しています。
そのため、より鮮明で美しい仕上がりになるほか、複雑な印刷物の実現も可能です。
金や銀といった煌びやかな色や蛍光色など、一般のプリンターでは出せないような印刷物も対応してもらえるため、まさに質重視の場合は印刷会社が向いていると言えます

まとめ

以上のように、印刷通販会社と印刷会社の違いについてご紹介してきました。
それぞれに良さがあり、お互いのメリットを理解したうえで依頼した方が、とてもお得に利用できます。
依頼する我々としても依頼内容によってどちらを選ぶかを吟味するのが大切となるでしょう。